「なんだ……このコーヒー、甘い……!?」
それが、すべての始まりでした。
今回は、僕たちが沖縄で「Quru Coffee & 96 Coffee Roastery」を開業するにあたって、絶対に譲れなかった相棒——オールドシューレンブルク(Schuilenburg)という焙煎機との出会いについてお話しします。
東北の小さなコーヒー屋さんで起きた「事件」
あれは移住を考えるより少し前、東北にあるとあるコーヒー屋さんにふらりと入った時のことです。
特に予備知識もなく、「あー、美味しいコーヒー飲みたいなぁ」くらいの軽い気持ちで注文した1杯。 一口飲んだ瞬間、脳内に雷が落ちました。
苦味でもない。酸味でもない。 口の中に広がったのは、今まで体験したことのない「とろけるような深い甘み」でした。
「え、これ砂糖入ってます……?(入ってない)」 「いや、なんか怪しい秘伝のシロップでも入れてます……?(入れてない)」
あまりの衝撃に、気がついたらマスターを問い詰めて……じゃなくて、思わず前のめりで尋ねていました。
「マスター!このコーヒー、一体どうやって淹れてるんですか!?」
するとマスターは、奥にある武骨で古めかしい機械を親指でサッと指さし、ニヤリと笑ってこう言ったのです。
「これだよ。オールドシューレンブルクで焼いてるからね」
一目惚れならぬ「一飲み惚れ」
そこに鎮座していたのは、現代のスタイリッシュな焙煎機とは似ても似つかない、重厚でクラシカルな鉄の塊。ベルギー生まれの「シューレンブルク(Schuilenburg)」でした。
ボタン一つで全自動コントロール!スマホアプリと連携!……なんてハイテク機能は一切ありません。 重い鋳鉄(ちゅうてつ)のボディに、熱をじっくり蓄えて豆の芯まで火を通す、実に頑固で職人気質なオールドマシンです。
でも、その機械が生み出すコーヒーには、僕がこれまで求めていた「理想の1杯」の答えが全て詰まっていました。
「僕が淹れたいのは、これだ……!このコーヒーの虜だ……!」
まさに、一目惚れならぬ「一飲み惚れ」。 その日を境に、僕の脳内は「シュイレンブルクで豆を焼く自分」のイメージでいっぱいになってしまいました。
扱いにくいからこそ、愛おしい
オールドスクイレンブルグは、ぶっちゃけるとめちゃくちゃ手がかかります。
現代の焙煎機が「優等生なデジタルカメラ」だとしたら、シューレンブルクは「完全手動のマニュアルフィルムカメラ」。 その日の気温、湿度、風の吹き方によって機嫌が変わるため、常に五感を研ぎ澄ませて「今日は調子どう?」と対話しながら火加減や排気を調整しなければなりません。
手軽さや効率、大量生産を求めるなら、間違いなく選ばない機械です。
でも、手間暇をかけた分だけ、他の機械では絶対に真似できない「深みと甘み」で応えてくれる。 その不器用で愚直な姿は、どこか僕たちが目指す「効率を追わず、自分らしく丁寧に生きる」というスタイルにも重なる気がしています。
東北の小さな店で僕の人生を狂わせた(笑)、あの奇跡の甘み。 今度は沖縄の風に乗せて、みなさまの元へお届けしたいと思っています。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!