前回、東北のコーヒー屋さんで「オールドSchuilenburg(シューレンブルク)」が生み出す謎の激ウマ甘みコーヒーに衝撃を受けたお話をしました。
あの日以来、僕の足はそのお店へ吸い寄せられるように向かっていました。
「またあの甘さを確かめたい……」という純粋な欲望(と、若干の執着心)を抱えてお店に通い詰め、コーヒーを飲みながらマスターにシューレンブルクの話をねだる日々。
完全に「シューレンブルク沼」にハマった怪しい客です。
「おいおい、本気か?」から始まった師弟関係
通い詰める中で、マスターはシューレンブルクがいかに「じゃじゃ馬」かを笑いながら教えてくれました。
「いいか? こいつは現代の優秀な焙煎機みたいに『ボタンぽちー』で同じ味を出してはくれないぞ」 「気圧が変われば不機嫌になるし、ちょっと目を離すと牙を剥く。まるで気まぐれな生き物さ」
鋳鉄(ちゅうてつ)の極厚ボディが作り出すクラシカルで独自の熱対流。 その熱量を絶妙にコントロールし、豆の芯までじっくりと熱を通すことでしか現れない「あの奥深い甘さ」。
手に入れるのも一苦労。なんと言っても超・年代物のヴィンテージ品です。メルカリで「ポチッ」と買える代物ではありません。
でも、話を聞けば聞くほど、知れば知るほど、僕の心は固まっていきました。
「Quru Coffee & 96 Coffee Roasteryに必要なのは、絶対にこのシューレンブルクだ」
扱いが難しく、入手困難。だけど、このじゃじゃ馬を乗りこなした先にしか「自分だけの最高の1杯」は存在しない。
その熱意(としつこさ?)が通じたのか、今やマスターは僕の「師匠」となり、この貴重すぎるスクイレンブルグでの焙煎をゼロから叩き込んでくれることになったのです。
失敗は焦げの味、成功は至福の甘さ
師匠のもとで学ぶ焙煎は、まさに刺激の連続です。
現代のデジタル焙煎機なら液晶画面に温度グラフが表示されますが、うちの師匠(とシューレンブルク)のレッスンは違います。
「音を聴け! 豆がハゼる(弾ける)瞬間を見逃すな!」 「匂いを感じろ! 香ばしさが甘みに変わる『一瞬』がある!」
五感をフル稼働させるスパルタ……もとい、愛のある指導。 ちょっと判断が遅れると、豆は一瞬で「黒焦げの苦い炭」に化けます。しかし、バチッとタイミングが噛み合った瞬間、部屋中に広がるのはあの日僕を打ちのめした「あの芳醇な甘い香り」。
年代物のスクイレンブルグ触らせてもらい、その機嫌の取り方を身体で覚える。 コーヒー業界広しといえど、こんなに贅沢で貴重な体験をしているやつはそういないはずです。
沖縄の風の中で、この経験を咲かせるために
東北の厳しい寒さの中、師匠とシューレンブルクに向き合ったこの濃厚な時間は、僕にとってかけがえのない財産になっています。
これから沖縄へ移住し、気候も湿度もまったく違う環境で「Quru Coffee & 96 Coffee Roastery」をスタートさせるとき、この「じゃじゃ馬と対話した経験」が必ず大きな武器になるはずです。
沖縄の温かい風と、職人技で手なずけたシューレンブルクが生み出す、世界でここだけの1杯。
みなさんに「えっ、砂糖入ってないの!?」と驚いてもらえる日を夢見て、今日も師匠のもとで修行に励みます!